「ウクライナ情勢」
ロシアのウクライナ侵攻は、クリミア併合再現を目指すプーチンによるプーチンのための戦争だ。22年独裁が続き、プーチンにはもはや現実が見えていない。KGBの後進である連邦保安局が「ゼレンスキーは早々に逃亡する」と安易に報告したことが電撃戦になったのではないか。
ロシア軍は東部国境に軍事力を集中し、クリミア半島とドンバス地方を繋ぐマリウプルを陥落させ、両地域を陸上回廊で結ぶことに成功した。しかしウクライナ軍も善戦し、北東部のハリコウではロシア軍を撃退するなど、長期戦の構えだ。ウクライナ軍の士気は高く、科学者の水準が高いことからサイバーディフェンスに優れ、ロシア軍のキーウ攻略も失敗した。
西側のウクライナへの支援は増加の一途で最新鋭の兵器がウクライナ軍にわたっている。ウクライナが善戦している以上、米バイデン大統領も中間選挙前に手を抜けず、米議会の強力な後押しで第二次世界大戦以来の武器貸与法を制定した。英国も米国と同一歩調だ。
ドイツはウクライナへの重火器の提供など、対ロ強硬策に踏み切った。バルト三国、チェコ、スロバキア、ポーランド等、旧共産圏の東欧諸国は、ロシアの侵攻を真剣に危惧している。伝統的に中立色の強いフィンランド、スウェーデンもついにNATO加盟申請に舵を切った。NATO拡大阻止を至上命題としてきたプーチン大統領にとっては大きな打撃だ。ウクライナで手いっぱいのロシアは有効な対抗措置を取れず、自前の集団防衛条約機構(CSTO)首脳会議を開催して見せたが、却って足並みの乱れを露呈してしまった。
中国はロシアに着く気はないが、米国との競争関係を意識しつつ、中立的な立場を堅持。しばらくは台湾進攻について再考せざるを得ないだろう。
兼原氏は、面積は米国の2倍でありながらGDPはその4分の1、NATO の30分の1に過ぎないロシアのアンバランスさを指摘。軍事情勢の詳細について解説した。また、核兵器の使用も示唆したプーチンの核の恫喝を受けて最悪のシナリオも示唆し、非核三原則見直しを含め、「わが国でも深い議論が必要だ」と訴えた。